自民党総裁選は安倍三選で決まりました。これで自民党員の選択は明瞭に下りました。
自民党員はこの困難な時代に憲法改正を狙い、戦犯の名誉回復までも視野に入れている安倍晋三を選びました。
戦後レジームからの脱却とはかつて新進党、民主党が政権を奪取する際に用いたキャッチフレーズですが、安倍晋三を選ぶということは国際社会での"戦後レジーム"の脱却を狙うという明確なメッセージを発信したことになります。
これは、一種の国際社会への挑戦であり、もし、自民党がかつての大日本帝国のような甘い夢想をしているとするなら非常に危険な事態だと言えるでしょう。
戦前の大日本帝国も、一流の政治論文を提出した近衛文麿が中国に対して"国民党政府を相手とせず"などと口にして太平洋戦争への道筋を整えるとは誰が想像したでしょうか?
現在の日本には大日本帝国のような強力な軍備は存在しません。それにも関わらず国際社会における旧枢軸国としての枠を超えた役割を目指すというのなら何らかの無理が出るのは仕方のないことです。
かつての冷戦時代、日本は中国共産党に対する米国の明確なカードでした。かつての侵略国が復活し、核武装するというのは中国としては一種の恐怖でもあったのでしょう。
ですが、今は中国の衛星国である北朝鮮さえもが核武装をし、米国が日本を核武装させるつもりが無いことは完全に見透かされている感があります。
そうでなければ、北朝鮮が核保有をして10数年も経つ間、放置することはしなかったでしょう。
更にありていに言えば、覇権国を決めた第二次大戦から未だ70年しか経過しておらず、かつての国内戦争である関ヶ原の清算にも200年かかったことを忘れるべきではないでしょう。
はっきり言ってしまうと、今の日本には力がありません。力が無いにも関わらず国内的には強力な極右政党を戴く事態が起こってしまいました。
そもそも、米国が自民党を支持するのは冷戦に勝ち抜いた自由主義陣営の保守政党という看板的事実があるからなのですが、安倍晋三を選ぶということはネオファシズム的な何かをそこに加えてしまうことであり、その点を冷酷に見透かされた時、日本としては何の言い訳も出来ない形式が整ってしまうというのが現実でしょう。
安倍晋三を支持するということは、終局的に米国の信頼をも裏切っている可能性があることを忘れるべきではありません。
大体、極右の言う太平洋戦争の大義を世界に発信するには、まず、米軍基地を撤去してもらわないと発信できるわけもないわけですが、そもそもその問題を口にすることができたのは本来中道的なスタンスの民主党だけだったりするわけですが…。
なんというか、鳩山首相が右翼で、自民党は左翼なのですかねえ…。
とにかく、安倍晋三の選任は自民党員の責任によることが大きいことは大きいのですが、結局、国民が信任したという責任は最終的に負わなければなりません。
戦前は、政党の腐敗がどうのこうのと色々口にしている内に大政翼賛会ができて太平洋戦争の流れで、戦中の翼賛選挙での信任が行われるという形で、結局、国民はいつの間にか誤った戦争に信任を与えてしまい、責任を取ることになったわけですが、今回も責任だけ国民が負うという形にならないよう気を付ける必要だけはあるかなあと感じます。
過ちは繰り返しません、とはいうのですが…。
自民党員の選択が過ちにならないように注意して注視したいものです。