空想政治読本~ライトノベル-魔術士オーフェン-~

ライトノベル初期のど真ん中の作品、魔術士オーフェン。
紆余曲折あったのか、現在では出版社を変えて出版されています。
魔術世界ファンタジーとスチームパンクを混ぜたような作品で、作者の幅広い知見と物理学のインチキくさい解説と精神魔術のぶっとんだ設定で、マニア心をくすぐった一作です。
これを読んでいなければなあという後悔するおじさんたちはきっと多いはず。
世界観は魔術士の選民社会と、近代的な銃火器、中世を思わせる王権と自由都市と魔術の存在によってアンバランスに発展した近世経済の取り合わせと言った感じ。
通貨ソケットは元のソルトチケットを基にした歴史マニアをくすぐる設定。
ファンタジー世界では人間以上の上位文明が良く登場しますが、この作品はその上位文明の限界と人間の発展の描写が上手くてつい引き込まれます。
ところで上位文明を今の科学万能社会で登場させようとすると、異なる次元とプログラミングを混ぜたような世界観にどうしてもなりがちですし、その線の方が説得力があります。
この作品では、上位文明の汲々とした西洋現実主義哲学的保守層の窮状に東洋哲学的な思想を持った主人公の超人主義をぶつける最後が見どころなのですが、今見ると、何だかシュレーディンガー先生でもあるまいし、と少し思ったりもします。
日本人はアジア人ですから、ファンタジーを突き詰めると、東洋的、仏教や儒教、老荘と実学的西洋合理主義との葛藤にたどり着いてしまってそこで悩んでしまうわけですが、これは仕方ないですよね。だって、東洋では産業革命も情報革命も起こせませんでしたから。
どうしても借り物のように見えて、文化至上主義の作家でさえもその点は気後れせずにはいられないのでしょう。
と、ライトノベルのお話からはずれてしまいましたが、混血が力の出元というのは興味深いですね。ネグロイドとコーカソイドの末裔であるモンゴロイドの歴史を紐解くと妥当かなという気はしないでもないです。
ファンタジーにはデウスエクスマキナの逃避先がありますから、安心して読めるのがよいです。
ただ、この手の作品は思春期に読むとかぶれてしまうのがなあ…。
我は放つ光の白刃!

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