自省録

ローマの5賢帝のマルクス・アウレリウスの著した実践ストア主義のバイブルである自省録。
勤勉、自然、諦念、公共心、無執着。
とにかくストイックで、支配者の義務を一心に体現したかのような文化的記念碑です。
ところで、現代社会ではストア主義とか仏教的悟りを持ち出すのは場違いだったり、笑われてしまうのではないか、とか思ってしまう雰囲気を感じることはありませんか?
ミルの自由論のように私たちはストア主義とか仏教的悟りとかエデンとかに逃げる権利はあります。
もちろん権力者の側にも追う権利があるのでしょう。
皇帝の自省録はそのような逃げには目もくれません。
どんな優れた人物でさえ消失は逃れえない、という皇帝が見つめ続けて否定した価値観が非難の対象としていたのが何なのかは現在からみれば一目瞭然でしょう。
にもかかわらず、皇帝のような権力も哲学的強靭な意思も持たない市民にはどうしても逃避する自由が必要なのだと思います。
全ての事物を生じさせ、それを過去に押し流していく冷酷無残な自然が作り出す現実とその対峙者に乾杯!
そこから逃避する人間もいずれは動かしようのない現実と向き合うしかない日がくるのかもしれませんね。

自省録