中国の奇書封神演義を知っていますか?
壮年の方は藤崎竜の漫画も知っているかもしれませんね。
これは明代に成立した殷周易姓革命をテーマに取った歴史ファンタジーですが、仙道という道教の教えを中心としながら、人間出身の仙人と妖怪出身の仙人との肩入れ合戦を描きながら、中国神話と民話、歴史を上手くコンバージェンスさせた漫画やライトノベルより胸が躍る小説です。
ところで、これは明代の民衆文化の進展に伴って起こった保守主義思想を中核に置いた作品とも取れます。
これは、闡教、截教をそれぞれ名誉ある血筋とそれを持たない血筋との変遷とみなし、歴史の重さと支配の正当性を臆面なくフィクションの中でも展開した非常に差別的な作品なのかもしれません。
それはそれとして、作品は面白いです。
日本人の判官びいきで、聞仲に肩入れしたくなるのが、難儀なところです。
前半は結構地道に人間や、半仙人が強いのですか、後半の散人や太古の幻獣の登場以降はバトルものの走りの性なのか、インフレーションが酷すぎて初期キャラはあまり活躍しません。
太平の時代の文化の爛熟は美麗にして、繊細華美ではあるのですが、平和期には平和期の悩みがるというものです。
やがて、明の栄光は西洋の干渉と、豊臣秀吉との戦役を経てヌルハチの野望の前に最後を迎えるのですが、その間接的な原因は明内での身分の硬直化と民衆の不満にあったのかもしれませんね。
…それにしても、歴史は不思議ですね。