反米と嫌中嫌韓

私の家はずーっと庶民らしいので、外交的なスタンスはありませんが、歴史の教科書や、仮想戦記、ゲームなどで、かつてのグレートパワーだったころの大日本帝国に多少のあこがれを抱いていたことがあります。皆さん、ありません?
それでも、私は一応、中学まではまともに教科書を読みこんで勉強していたので、どう見ても日本が侵略国であり、国際社会へ挑戦したことは疑いのない事実だろうなあとは感じていました。
さて、少し文学者の話をしましょう。
大江健三郎はキリスト教的マジックリアリズムの境地を切り開いてノーベル文学賞を受賞しました。
そして、戦前日本人の思想を引く三島由紀夫は70年安保の反米の機運を見て自衛隊を扇動し、結果、割腹自殺をとげました。
ここで思うのですが、三島のネームバリューでは足りなかったわけですが、もし、彼が天皇家の玄孫であったり、戦犯と遺族会の支持を得ていたとしたらどうだったでしょうか?
三島の行動については大江健三郎も興味があるようで、彼が割腹自殺をしなかったら、という前提の話を織り込んだ『さようなら私の本よ』を執筆しています。
さて、それで三島由紀夫がもし、自衛隊の決起に成功し、クーデターで首府を占拠したとして、その後どうなったでしょう?
彼はヒトラーを演じて、第二大日本帝国を打ち立てたでしょうか?
…おそらく、それは無理でしょう。
即座に米軍が展開して、鎮圧し、戦後日本はさらなる枷を課せられたでしょう。
これが米ソ冷戦で日本が西側の宣伝国家であったころの話です。自衛隊が決起しなかったのはその後の展開を予期していたからでしょう。
2017年現在、日本は世界第3位の経済国家に逆戻りし、ロシアとはいまだに平和条約を結べていません。
沖縄県民には残念なことですが、この状況下で反米運動を起こそうという人間はいないでしょう。
さて、そこまでは誰もが認めることでしょうが、嫌中嫌韓についてはどうでしょうか?
韓国については、天皇家の由来は朝鮮半島にあるらしいので、まあ、微妙な問題ですね。
中国については、どうなんでしょうか?
相手は常任理事国の水爆保有国だから、まあ、相手にしてもらいたいかなあというアピールかなあとも思えますが、その萌えなのですかねえ。
ともかくそういう感情を抜きに分析すると、嫌中嫌韓をあおる人たちには、やはりグレートパワーに数えられていたころの大日本帝国へのあこがれがあるのかなあと感じます。
で、結局、その感情を納得させるためには、国際社会への挑戦を行うしかないわけですが…。
そう考えると、嫌中嫌韓は少し無理なのかなあと感じます。
ひょっとしたら、三島の決起に自衛隊が応じていた方が、まだ、グレートパワーの残滓への夢を満足できたのかもしれませんね。

太極図