退職給付に関する会計基準(企業会計基準26号)

用語の定義

4.「確定拠出制度」とは、一定の掛金を外部に積み立て、事業主である企業が、当該掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負わない退職給付制度をいう。
5.「確定給付債務」とは、確定拠出制度以外の退職給付制度をいう。
6.「退職給付債務」とは、退職給付のうち、認識辞典までに発生していると認められる部分を割り引いたものをいう。
7.「年金資産」とは、特定の退職給付制度のために、その制度について企業と従業員との契約(退職金規定等)等に基づき積み立てられた、次のすべてを満たす特定の資産をいう。
(1)退職給付以外に使用できないこと
(2)事業主及び事業主の債権者から法的に分離されていること
(3)積立超過分を除き、事業主への返還、事業主からの解約・目的外の払出し等が禁止されていること
(4)資産を事業主の資産と交換できないこと
9.「利息費用」とは、割引計算により算定された期首時点における退職給付債務について、期末までの時の経過により生じると合理的に期待される計算上の収益をいう。
10.「期待運用収益」とは、年金資産の運用により生じると合理的に期待される計算上の収益をいう。
11.「数理計算上の差異」とは、年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異及び見積数値の変更等により発生した差異をいう。なお、このうち当期純利益を構成する項目として費用処理(費用の減額処理又は費用を超過して減額した場合の利益処理を含む。以下同じ。)されていないものを「未認識数理計算上の差異」という(第24項参照)。
12.「過去勤務費用」とは、退職給付水準の改定等に起因して発生した退職給付債務の増加又は減少部分をいう。なお、このうち当期純利益を構成する項目として費用処理されていないものを「未認識過去勤務費用」という(第25項参照)。

損益計算書及び包括利益計算書(又は損益及び包括利益計算書)

14.次の項目の当期に係る額は、退職給付費用として、当期純利益を構成する項目に含めて計上する。
(1)勤務費用(第17項参照)
(2)利息費用(第21項参照)
(3)期待運用収益(第23項参照)
(4)数理計算上の差異に係る当期の費用処理額(第24項参照)
(5)過去勤務費用に係る当期の費用処理額(第25項参照)
15.数理計算上の差異の当期発生額及び過去勤務費用の当期発生学のうち、費用処理されない部分(未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用となる。)については、その他の包括利益に含めて計上する。その他の包括利益累計額に計上されている未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用のうち、当期に費用処理された部分については、その他の包括利益の調整(組替調整)を行う(第24項また書き及び第25項また書き参照)。

退職給付債務及び勤務費用

(退職給付債務の計算)
16.退職給付債務は、退職により見込まれる退職給付の総額(以下「退職給付見込額」という。)のうち、期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算する。
(勤務費用の計算)
17.勤務費用は、退職給付見込額のうち当期に発生したと認められる額を割り引いて計算する。
(退職給付見込額の見積り)
18.退職給付見込額は、合理的に見込まれる退職給付の変動要因を考慮して見積る。
(退職給付見込額の期間帰属)
19.退職給付見込額のうち期末までに発生したと認められる額は、次のいずれかの方法を選択適用して計算する。この場合、いったん採用した方法は、原則として、継続して適用しなければならない。
(1)退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法(以下「期間定額基準」という。)
(2)退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法(以下「給付算定式基準」という。)
なお、この方法による場合、勤務期間の後期における給付算定式に従った給付が、初期よりも著しく高い水準となるときには、当該期間の給付が均等に生じるとみなして補正した給付算定式に従わなければならない。
(割引率)
20.退職給付債務の計算における割引率は、安全性の高い債券の利回りを基礎として決定する。
21.利息費用は、期首の退職給付債務に割引率を乗じて計算する。
年金資産
22.年金資産の額は、期末における時価(公正な評価額)により計算する。
23.期待運用収益は、期首の年金資産の額に合理的に期待される収益率(長期期待運用収益率)を乗じて計算する。
数理計算上の差異
24.数理計算上の差異は、原則として各期の発生額について、予想される退職期から現在までの平均的な期間(以下「平均残存勤務期間」という。)以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理する。
また、当期に発生した未認識数理計算上の差異は税効果を調整の上、その他の包括利益を通じて純資産の部に計上する(第27項参照)。
過去勤務費用
25.過去勤務費用は、原則として各期の発生額について、平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理する。
また、当期に発生した未認識数理計算上の差異は税効果を調整の上、その他の包括利益を通じて純資産の部に計上する(第27項参照)。

確定給付制度の開示

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27.積立状況を示す額について、負債となる場合は「退職給付に係る負債」等の適当な科目をもって固定負債に計上し、資産となる場合は「退職給付に係る資産」等の適当な科目をもって固定資産に計上する。未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用については、税効果を調整の上、純資産の部におけるその他の包括利益累計額に「退職給付に係る調整累計額」等の適当な科目をもって計上する。
28.退職給付費用(第14項参照)については、原則として売上原価又は販売費及び一般管理費に計上する。
ただし、新たに退職給付制度を採用したとき又は給付水準の重要な改訂を行ったときに発生する過去勤務費用を発生時に全額費用処理する場合などにおいて、その金額が重要であると認められるときには、当該金額を特別損益として計上することができる。
29.当期に発生した未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用並びに当期に費用処理された組替調整額(第15項参照)については、その他の包括利益に「退職給付に係る調整額」等の適当な科目をもって、一括して計上する。