企業結合に関する会計基準(企業会計基準21号)

用語の定義

4.「企業」とは、会社及び会社に準ずる事業体をいい、会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)を指す。
5.「企業結合」とは、ある企業又はある企業を構成する事業と他の企業又は他の企業を構成する事業とが1つの報告単位に統合されることをいう。なお、複数の取引が1つの企業結合を構成している場合には、それらを一体として取り扱う。
9.「取得」とは、ある企業が他の企業又は企業を構成する事業に対する支配を取得することをいう。
11.「共同支配企業」とは、複数の独立した企業により共同で支配される企業をいい、「共同支配企業の形成」とは、複数の独立した企業が契約等に基づき、当該共同支配企業を形成する企業結合をいう。

取得の会計処理

17.共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合は取得となる。また、この場合における会計処理は、次項から第36項による(以下、次項から第33項による会計処理を「パーチェス法」という。)。
取得企業の決定方法
18.取得とされた企業結合においては、いずれかの結合当事企業を取得企業として決定する。非取得企業の支配を獲得することなる取得企業を決定するために、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)の考え方を用いる。また、連結会計基準の考え方によってどの結合当事企業が取得企業となるかが明確ではない場合には、次項から第22項の要素を考慮して取得企業を決定する。
19.主な対価の種類として、現金若しくは他の資産を引き渡す又は負債を引き受けることとなる企業結合の場合には、通常、当該現金若しくは他の資産を引き渡す又は負債を引き受ける企業(結合企業)が取得企業となる。
取得原価の算定
基本原則
23.非取得企業または取得した事業の取得原価は、原則として、取得の対価(支払対価)となる財の企業結合日における時価で算定する。支払対価が現金以外の資産の引渡し、負債の引受け又は株式の交付の場合には、支払対価となる財の時価と被取得企業又は取得した事業の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定する。
取得原価の配分方法
31.取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には、その超過額はのれんとして次項に従い会計処理し、下回る場合には、その不足額は負ののれんとして第33項に従い会計処理する。
のれんの会計処理
32.のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果の及び期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。ただし、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事業年度の費用として処理することができる。
負ののれんの会計処理
33.負ののれんが生じると見込まれる場合には、次の処理を行う。ただし、負ののれんが生じると見込まれるときにおける取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回る額に重要性が乏しい場合には、次の処理を行わずに、当該下回る額を当期の利益として処理することができる。
(1)取得企業は、すべの識別可能資産及び負債(第30項の負債を含む。)が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直す。
(2)(1)の見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理する。

開示

のれんの表示
47.のれんは無形固定資産の区分に表示し、のれんの登記償却額は販売費及び一般管理費の区分に表示する。
負ののれんの表示
48.負ののれんは、原則として、特別利益に表示する。

結論の背景

共同支配企業の形成の会計処理
116.本会計基準にいう共同支配企業の形成は持分の結合であり、共同支配企業は、資産及び負債を企業結合直前に付されていた適正な帳簿価額により計上することなる。平成15年会計基準では、共同支配企業の形成の会計処理は、資本の内訳の引継方法及び企業結合年度の連結財務諸表の作成に係る定めを除き、持分プーリング法と同一の処理方法としており、これを持分プーリング法に準じた処理方法とよんでいた。しかし、平成20年改正会計基準では、持分プーリング法を廃止することとしたことから、持分プーリング法に準じた処理方法という呼称もしないこととした。
なお、平成15年会計基準では、共同支配投資企業が共同支配企業の形成にあたり事業を移転した場合には、移転した事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額による純資産額に基づいて当該共同支配企業に対する投資の取得原価を算定することとし、共同支配企業の資本のうち共同支配投資企業の持分比率に対応する部分との差額は処理しないこととしていた。しかしながら、平成20年改正会計基準では、事業分離等会計基準における分離元企業及び結合当事企業の株主に係る会計処理との整合性を重視して、国際的な会計基準と同様に、連結財務諸表上、共同支配投資企業は共同支配企業に対する投資について通常の持分法を適用することに変更した。このため、今後、当該差額は処理されることとなる。
共通支配下の取引
119.共通支配下の取引とは、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合であり、共通支配下の取引は、親会社の立場からは企業集団内における純資産等の移転取引として内部取引と考えた。このため、連結財務諸表と同様に、個別財務諸表の作成にあたっても、基本的には、企業結合の前後で当該純資産等の帳簿価額が相違することにならないよう、企業集団内における移転先の企業は移転元の適正な帳簿価額により計上することとした。
ただし、親会社と子会社が企業結合する場合において、連結財務諸表の作成にあたり、子会社の純資産等の帳簿価額を修正しているときは、親会社が作成する個別財務諸表においては、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額により計上しなければならないこととした。